SPC組合ブッログ

SPC組合雑記

【第1話】シックスパックストーリー

 ある朝、ゴリゴーリ・ザムザが気がかりな夢から目を覚ますと、自分が床の中で猫になっているのを発見した。
 正確に言うと、〈腹筋が六つに割れた、やけに筋肉質な8頭身の〉猫である。
 ザムザは生真面目な学生であったから、そのような状況の中で、現在が何時であるか確認を取ろうとした。ザムザは8時過ぎを示す時計に遅刻を確信した後、自分のことについて、少し考える余裕が出来始めた。
 「なんで俺、猫になってんだぁ」と、六畳の整頓された部屋の姿見を見ながら、ザムザはつぶやいた。部屋の中には水色の大きなゴミ箱があって、それを見てザムザは今日がゴミの日だと思い出し、立ち上がった。
 ザムザがゴミを出しに外へ出ると、一つ、今までとの大きな違いを素肌で感じた。
 「ここ、日本じゃねえ」
 ザムザは辺りを囲む広大な大自然––いわゆる森––に狼狽えながら、自分に起きている事象について説明をつけようとした。
 『自分は腹筋の割れた猫になり、全く違う次元の世界に今存在している』と、現状を整理し、とりあえずさっきまでいた部屋へ戻ろうとして振り返ると、部屋のあった空間は、木こりが使うようなこっそりとした小屋になっていて、扉はナンキン錠様のもので施錠されていた。
 ザムザは動転することもバカバカしいほどに呆然として、ただ周りを取り囲む緑に目をやった。
 辺りを見ていると、先ほどは衝撃のあまり気付けなかった獣道が森の中を割っていることに気づいたザムザは、とりあえず歩くことにした。ザムザは見たこともない植物の中に、最初の一歩を踏み出して行った。