SPC組合ブッログ

SPC組合雑記

【第3話】トラベラー

 うねる大地の中から、カエルの巨大な口が姿を現した。
 「まずい!急げッ!!」と、矢を放った直後、反動を受けてよろめく少女を抱え、ザムザは走った。
 大木が倒れかかってくる、その合間をザムザは抜けてゆく。とっさに殺意を感じ、ザムザは屈んだ。
 すると15メートルはあろうカエルの細長い舌が空を切ってザムザの頭上をかすめていった。
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 「危ねえッ!」と、ザムザは少女を抱え、低姿勢のまま走り出した。

 「ちょっ…離してよ!」と少女が声を発してきたのを聞いて、ザムザは自分が無意識のうちに抱いていた少女の存在に気づいた。しかし、ザムザは今この子を下すのは時間のロスだと判断し、「もうちょっと、走るから」とだけ言って森をかけていった。

 カエルの動きによる地響きがなくなった頃には、カエルの姿はおろか、先ほどまで歩いていた獣道までもを、ザムザは完全に見失ってしまっていた。少女に体を叩かれザムザは彼女を立たせてあげた。

 『パァン!』少女はザムザの頬を思いきり平手打ちしていた。
「痛っ…いや…助かったのは俺のおかげだろ!?少しは感謝したらどうなんだよ!」
「そんな全裸の変態に言われても信憑性ゼロだニャ!!」
「あっ…は?(そういえば全裸だったのか)…っていうかここは何処なんだよ!俺は朝起きてからこの森にいて、このワケがわからない見た目になってたんだ」
「ふーん、君、“トラベラー”ニャ?」
「はぁ?何だそりゃ?まぁ確かに“旅人”ではあるかもしれない」
「…やっぱりニャ。そういうことなら、ついてくるニャン」

 少女は何やらポケットに入っていたコンパスのようなもので座標を確認し、先頭に立って歩き出した。
「あっ。言うの忘れてたニャ。あたしはニャンコス=ジィバ。よろしくニャ?」
「よろしく、ニャンコス。俺はゴリゴーリ・ザムザ」
 2人は軽く握手を交わし、歩き始めた。